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東京地方裁判所 昭和63年(行ウ)60号 判決

東京都江東区大島八丁目三九-二二-七一三

原告

安元孝弘

東京都江東区亀戸二丁目一七番八号

被告

徳山税務署長事務承継者

江東東税務署長

岡田俊雄

右指定代理人

萩原秀紀

石黒邦夫

前崎善朗

丸山将利

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  徳山税務署長が原告の昭和五七年分所得税について昭和六一年三月八日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定のうち、課税総所得金額九〇二万一〇〇〇円、納付すべき税額二一六万七九〇〇円、過少申告加算税額九万一〇〇〇円を超える部分を取り消す。

2  徳山税務署長が原告の昭和五八年分所得税について昭和六一年三月八日付けでした更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、平成元年二月二八日付け過少申告加算税変更決定により減額された後のもの)のうち、課税総所得金額七四〇万三〇〇〇円、納付すべき税額一五七万七〇〇〇円、過少申告加算税額二万六〇〇〇円を超える部分を取り消す。

3  徳山税務署長が原告の昭和五九年分所得税について昭和六一年三月八日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定(ただし、平成元年二月二八日付け過少申告加算税変更決定により減額された後のもの)のうち、課税総所得金額四八五万九〇〇〇円、納付すべき税額八四万三二〇〇円、過少申告加算税額二万八六〇〇円を超える部分を取り消す。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の昭和五七年分ないし昭和五九年分所得税につき、原告が法定申告期限内に当時の原告の納税地を所轄する徳山税務署長に対してした確定申告、同税務署長がした更正及び過少申告加算税賦課決定、これに対する不服申立て並びに昭和五八年分及び昭和五九年分所得税につき被告がした過少申告加算税変更決定の経緯は、別表一記載のとおりである。なお、原告の納税地の変更に伴い、昭和六二年一月一四日以降、右各更正及び各過少申告加算税賦課決定に関する権限に属する事務は、被告が承継した。

2  別表一記載の各年分の更正(以下、併せて「本件各更正」といい、特定の年分の更正を指すときは、例えば、昭和五七年分の更正については「昭和五七年分更正」のようにいう。)のうち、それぞれ同表の各年分の審査請求の項記載の課税総所得金額及び納付すべき税額を超える部分は、課税総所得金額及び納付すべき税額を過大に認定した違法があり、また、本件各更正を前提とした同表記載の各年分の過少申告加算税賦課決定(ただし、昭和五八、五九年分については平成元年二月二八日付け過少申告加算税変更決定により減額された後のもの。以下「本件各賦課決定」という。)のうち、過少申告加算税額が五七年分については九万一〇〇〇円、昭和五八年分については二万六〇〇〇円、昭和五九年分については二万八六〇〇円を超える部分も違法である。

3  よつて、原告は、本件各更正及び本件各賦課決定のうち、右部分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(課税処分等の経緯)の事実は認める。

2  同2は争う。

3  同3は争う。

三  被告の主張

1  原告の昭和五七年分の課税総所得金額

(一) 総収入金額(不動産所得に係るものをいう。以下同じ。) 二二三四万六一七八円

(1) 不動産賃貸収入の金額 二二三二万五〇〇〇円

右収入金額の賃貸物件別の内訳は、別表二の昭和五七年分欄の記載のとおりである。

(2) 雑収入の金額 二万一一七八円

右金額は、原告が固定資産税の納付により収受した報奨金の額のうち雑収入とすべき金額であり、その内訳は、別表三の1の昭和五七年分のB欄記載のとおりである。

(二) 必要経費(不動産所得に係るものをいう。以下同じ。) 四七九万六三七二円

(1) 租税公課 七五万七四三四円

右金額は、必要経費に算入される固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」という。)の額であり、その明細は、別表四の1の昭和五七年分欄に記載のとおりである。

(2) 損害保険料 一万〇二五五円

(3) 減価償却費 二〇一万五〇一一円

右金額算出の明細は、別表五の一に記載のとおりである。

右の償却方法については、昭和五八年分、昭和五九年分を含め、原告が償却方法の選定に係る届出をしていなかつたため、所得税法四九条及び同法施行令一二五条一号の規定に基づき定額法としたものである。

(4) 借入金利息 一九九万三六七二円

右金額の明細は、別表六の昭和五七年分欄に記載のとおりである。

(5) 管理費 二万円

右金額は、別表二の順号6掲記の東砂三丁目ハイツに係る管理費のうち必要経費に算入される金額であり、昭和五七年一一月分及び同年一二月分の管理費の額である。

(三) 不動産所得の金額 一七五四万九八〇六円

右金額は、右1の総収入金額二二三四万六一七八円から右2の必要経費の合計額四七九万六三七二円を控除した金額である。

(四) 所得控除の額の合計額 二一六万六二〇〇円

(五) 課税総所得金額 一五三八万三〇〇〇円

右金額は、右(三)の不動産所得の金額一七五四万九八〇六円から右(四)の所得控除の額の合計額二一六万六二〇〇円を控除した金額(国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数切捨て)である。

2  原告の昭和五八年分の課税総所得金額

(一) 総収入金額 二四一七万一五六六円

(1) 不動産賃貸収入の金額 二一四五万円

右収入金額の賃貸物件別の内訳は、別表二の昭和五八年分欄に記載のとおりである。

(2) 雑収入の金額 二七二万一五六六円

右金額は、原告が固定資産税の納付により収受した報奨金の額のうち別表三の1の昭和五八年分のB欄に内訳を記載した雑収入とすべき金額三万四一八六円と、別表二の順号8掲記のモノハウスⅡの建物を無償取得したことによる経済的利益の金額二六八万七三八〇円との合計額である。

(二) 必要経費 六三九万二八二二円

(1) 租税公課 一〇二万五九九八円

右記は、必要経費に算入される固定資産税等及び不動産所得税の額であり、その明細は、別表四の1の昭和五八年分欄の記載のとおりである。

(2) 損害保険料 二万一二三八円

(3) 修繕費 一六万三八〇〇円

右金額は、別表二の順号11掲記のカーサ蒲田に係る修繕費として東洋カーペット工業株式会社に対して支払つた一一万六〇〇〇円と、東砂三丁目ハイツに係る修繕費として株式会社太平電工に対して支払つた四万七八〇〇円との合計額である。

(4) 減価償却費 二三六万八〇五七円

右金額算出の明細は別表五の二に記載のとおりである。なお、東砂三丁目ハイツは、昭和五八年一二月以降、空室となつて、貸付けの用に供するものとはいえなくなつたから、その償却期間は同年一月から一一月までの一一か月としたものである。

(5) 借入金利息 二六七万三七二九円

右金額の明細は、別表六の昭和五八年分欄に記載のとおりある。

(6) 管理費 一一万円

右金額は、東砂三丁目ハイツに係る管理費のうち必要経費に算入される金額であり、昭和五八年一月分から同年一一月分までの管理費の金額である。

(7) 広告宣伝費

右金額は、別表二の順号7掲記のモノハウスⅠに係る広告宣伝費として株式会社西部読連に対して支払われたものである。

(三) 不動産所得の金額 一七七七万八七四四円

右金額は、右1の総収入金額二四一七万一五六六円から右2の必要経費の合計額六三九万二八二二円を控除した金額である。

(四) 所得控除の額の合計額 二五四万六三〇〇円

(五) 課税総所得金額 一五二三万二〇〇〇円

右金額は、右(三)の不動産所得の金額一七七七万八七四四円から右(四)の所得控除の額の合計額二五四万六三〇〇円を控除した金額(国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数切捨て)である。

3  原告の昭和五九年分の課税総所得金額

(一) 総収入金額 一九六一万七六九九円

(1) 不動産賃貸収入の金額 一九五八万〇一六〇円

右収入金額の賃貸物件別の内訳は、別表二の昭和五九年分欄に記載のとおりである。

(2) 雑収入の金額 三万七五三九円

右金額は、原告が固定資産税の納付により収受した報奨金の額のうち雑収入とすべき金額であり、その内訳は、別表三の1の昭和五九年分のB欄に記載のとおりである。

(二) 必要経費 五二六万六九六八円

(1) 租税公課 一〇一万一〇八六円

右金額は、必要経費に算入される固定資産税等及び不動産取得税の額であり、その明細は、別表四の1の昭和五九年分欄に記載のとおりである。

(2) 損害保険料 一万一二六〇円

(3) 修繕費 一一万七〇〇〇円

右金額は、別表二の順号9掲記のストーク新川に係るものとして東洋カーペット工業株式会社に対して支払つた修繕費の額である。

(4) 減価償却費 二二五万二三八三円

右金額算出の明細は別表五の三に記載のとおりである。

(5) 借入金利息 一八六万三〇三九円

右金額の明細は別表六の昭和五九年分に記載のとおりである。

(6) 管理費 一万二二〇〇円

右金額は、別表二の順号10掲記のシャトレーイン横浜に係る管理費として株式会社シャトレーイン横浜に対して支払つた金額である。

(三) 不動産所得の金額 一四三五万〇七三一円

右金額は、右(一)の総収入金額一九六一万七六九九円から右(二)の必要経費の合計額五二六万六九六八円を控除した金額である。

(四) 所得控除の額の合計額 二七四万二三〇〇円

(五) 課税総所得金額 一一六〇万八〇〇〇円

右金額は、右(三)の不動産所得の金額一四三五万〇七三一円から右(四)の所得控除の合計額二七四万二三〇〇円を控除した金額(国税通則法一一八条一項に基づき一〇〇〇円未満の端数切捨て)である。

4  本件各更正の適法性

以上、原告の各係争年分の所得税の課税総所得金額は、右1ないし3の各(五)に述べたとおりであり、本件各更正における課税総所得金額はいずれもこれを下回るものであるから適法である。

5  本件各賦課決定の適法性

本件各賦課決定のうち、昭和五七年分及び昭和五八年分については、国税通則法六五条一項(ただし、昭和五九年法律第五号による改正前のもの)に基づき、右両年分に係る更正により新たに納付すべき所得税額(同法一一八条三項に基づき一万円未満の端数を切捨て。)に一〇〇分の五の割合を乗じて算出したものであり、昭和五九年分については、国税通則法六五条一項(ただし、昭和六二年法律第九六号による改正前のもの)二項に基づき、昭和五九年分の更正により新たに納付すべき所得税額(同法一一八条三項に基づき一万円未満の端数切捨て)に一〇〇分の五を乗じた金額と、右の税額のうち五〇万円を超える金額に一〇〇分の五を乗じた金額との合計額を算出したものであるから、本件各賦課決定はいずれも適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1(原告の昭和五七年分の課税総所得金額)について

(一) (一)(総収入金額)について

(1) (1)(不動産賃貸収入の金額)は、当初、その全部を認めたが、別表二の順号2掲記の久留米ラーメン、同3掲記のドライブインふじや、同4掲記のラツキーセブン及び同5掲記のドライブイン大谷(昭和五八年の途中からは賃借人の変更により「モノハウスⅠ」と名称が変わつたが、同一の建物である。以下別表二、四、五の二、三を除き「ドライブイン大谷」という。)に係る部分については、その自白を撤回し、右各物件の賃貸収入の全部が原告に帰属することは否認する。

(被告)

右の自白の撤回には異議がある。

(2) (2)(雑収入の金額については、被告主張の報奨金を収受した事実は認めるが、それが原告の所得税の計算上収入として扱われることは争う。

(二) (二)(必要経費)について

(1) (1)(租税公課)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、右金額に昭和五七年分更正で認められたその余の租税公課に係る額を加算した合計九七万六四七九円が算入されるべきである。

(2) (2)(損害保険料)は認める。

(3) (3)(減価償却費)は、別表五の一掲記の各資産については、同表のA欄、B欄、F欄は認めるが、C1欄の取得価額は争う。

なお、ドライブインふじやについては、昭和四九年に建物の増築を行い、その費用として大建総業株式会社に対し六〇〇万円を支払つているので、右増築分に係る減価償却費として二二万五〇〇〇円が必要経費に算入されるべきである。

また、別表五の一掲記の各資産のほか、原告が居住するイトーピア東大島マンシヨン七一三号室(以下「イトーピア東大島」という。)の一部を不動産所得に係る収入金額を得るための事務所として使用しているので、イトーピア東大島に係る減価償却費のうち、右の事務所部分に係る分として一七万一三六〇円が必要経費に算入されるべきである。

(4) (4)(借入金利息)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にも算入されるべきものがある。

(5) (5)(管理費)は、被告主張の額の必要経費に算入されることは認めるが、他にイトーピア東大島の管理費のうち、事務所部分に係る分として八万二〇八〇円が算入されるべきである。

(三) (三)(不動産所得の金額)は争う。

(四) (四)(所得控除の額の合計額)は認める。

(五) (五)(課税総所得金額)は争う。

2  被告主張2(原告の昭和五八年分の課税総所得金額)について

(一) (一)(総収入金額)について

(1) (1)(不動産賃貸収入の金額)についての認否の内容並びに自白の撤回の経緯及びこれに対する被告の異議については、昭和五七年分に係る右1(一)(1)と同様である。

(2) (2)(雑収入の金額)については、被告主張の報奨金を収受した事実は認めるが、それが原告の所得税の計算上収入として扱われることは争う。モノハウスⅡの建物を取得したことは認めるが、無償であることは否認する。

(二) (二)(必要経費)について

(1) (1)(租税公課)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、右金額に昭和五八年分更正で認められたその余の租税公課に係る額を加算した合計一三一万〇五一〇円が算入されるべきである。

(2) (2)(損害保険料)は認める。

(3) (3)(修繕費)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にイトーピア東大島の事務所部分に係る分として一一万六〇〇〇円が算入されるべきである。

(4) (4)(減価償却費)は、別表五の二掲記の各資産について同表のA欄、B欄、F欄及び東砂三丁目ハイツが昭和五八年一二月以降空室となつたことは認めるが、同表掲記の各資産について同表のC1欄の取得価額並びに東砂三丁目ハイツ及びモノハウスⅡについてI欄の償却期間は争う。

東砂三丁目ハイツは、昭和五八年一二月に空室になつた後も毎日ハウジング新宿店等に賃借人の募集を依頼していたから、貸付けの用に供していたものとして、償却期間は同月を含めた一二分の一二とされるべきであり、また、モノハウスⅡについても償却期間は一二分の一一とされるべきである。

また、別表五の二掲記の資産のほか、イトーピア東大島の減価償却費のうち、事務所部分に係る分として一七万一三六〇円、ドライブインふじやの建物増築に係る減価償却費として二二万五〇〇〇円が算入されるべきである。

(5) (5)(借入金利息)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にも算入されるべきものがある。

(6) (6)(管理費)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にイトーピア東大島の管理費のうち、事務所部分に係る分として八万四〇八〇円が算入されるべきである。

(7) (7)(広告宣伝費)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にも算入されるべきものがある。

(三) (三)(不動産所得の金額)は争う。

(四) (四)(所得控除の額の合計額)は認める。

(五) (五)(課税総所得金額)は争う。

3  被告主張3(原告の昭和五九年分の課税総所得金額)について

(一) (一)(総収入金額)について

(1) (1)(不動産賃貸収入の金額)についての認否並びに自白の撤回の経緯及びこれに対する被告の異議については、昭和五七年分に係る右1(一)(1)と同様である。

(2) (2)(雑収入の金額)については、被告主張の報奨金を収受した事実は認めるが、それが原告の所得税の計算上収入として扱われることは争う。

(二) (二)(必要経費)について

(1) (1)(租税公課)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、右金額に昭和五九年分更正で認められたその余の租税公課に係る額を加算した合計一二八万五八二五円が算入されるべきである。

(2) (2)(損害保険料)は認める。

(3) (3)(修繕費)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にイトーピア東大島の事務所部分に係る分として三万八〇〇〇円が算入されるべきである。

(4) (4)(減価償却費)は、別表五の三掲記の各資産については、同表のA欄、B欄、F欄は認めるが、C1欄の取得価額は争う。

また、別表五の三掲記の資産のほか、イトーピア東大島の減価償却費のうち、事務所部分に係る分として一七万一三六〇円、ドライブインふじやの建物増築に係る減価償却費として二二万五〇〇〇円、東砂三丁目ハイツの減価償却費として三四万六六一一円が加えられるべきである。

(5) (5)(借入金利息)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にも算入されるべきものがある。

(6) (6)(管理費)は、被告主張の額が必要経費に算入されることは認めるが、他にイトーピア東大島の管理費のうち、事務所部分に係る分として九万〇〇九六円、東砂三丁目ハイツの管理費として一二万円が算入されるべきである。

(三) (三)(不動産所得の金額)は争う。

(四) (四)(所得控除の額の合計額)は認める。

(五) (五)(課税総所得金額)は争う。

4  被告主張4(本件各更正の適法性)及び同5(本件各賦課決定の適法性)は、いずれも争う。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  請求原因1(課税処分等の経緯)の事実については当事者間に争いがない。

二  原告の昭和五七年分の課税総所得金額について

1  総収入金額

(一)  不動産賃貸収入の金額

被告主張1(一)(1)(不動産賃貸収入の金額)について原告は、当初、その全部を認めたが、その後、久留米ラーメン、ドライブインふじや、ラツキーセブン及びドライブイン大谷に係る部分について自白を撤回し、右各物件に係る賃貸収入の全部が原告に帰属することを否認した。

しかし、自白の撤回は、自白が真実に反しかつ錯誤に基づく場合でなければ許されないと解すべきところ、本件では右各物件のうちラツキーセブンについては自白が真実に反しかつ錯誤に基づくことを認めるに足りる証拠はない。

また、成立に争いのない甲第一五、第一六号証、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第二四ないし第二六号証及び弁論の全趣旨によれば、ドライブインふじやの建物の敷地については、昭和四八年一一月三〇日受付で安元義隆名義に、さらに、昭和五八年二月一八日受付で有限会社毛利公名義に所有権移転登記がそれぞれされていること、ドライブイン大谷の建物については、昭和五一年四月二一日受付で安元孔子名義に所有権移転登記がされていること、昭和五七年ないし昭和五九年分の賃料は、ドライブイン大谷及び久留米ラーメンについてはその全額が、ドライブインふじやについてはその半額が、それぞれ各賃借人から安元義隆名義の銀行預金口座に振り込まれていることが認められるほか、いずれも安元義隆を貸主とした同人及び賃借人らの作成名義に係る久留米ラーメンの建物及びその敷地についての土地建物賃貸借契約書二通(賃貸期間を昭和五五年四月一日から昭和五七年三月三一日とするもの及び同年四月一日から昭和六〇年三月三一日とするもの各一通)並びにドライブイン大谷の建物及びその敷地についての土地建物賃貸借契約書一通(賃貸期間を昭和五六年五月二六日から昭和五八年五月二六日とするもの)が存在する(甲第二〇ないし第二二号証)。

しかしながら、他方、成立に争いのない甲第七、第一八号証、乙第四号証及び弁論の全趣旨によれば、安元義隆は原告の父、安元孔子は原告の妻であること、原告は、本件の異議申立て及び審査請求のいずれの段階においても、ドライブイン大谷及び久留米ラーメンに係る少なくとも本訴で被告の主張する額の賃貸収入が原告に帰属することを一貫として認めていたこと、また、ドライブインふじやに係る収入についても、右収入に係る所得の種類が不動産所得であることは争つていたものの、右収入が原告に帰属すること自体については争つていなかつたことが認められ、右各事実によれば、原告が右各物件の取得及び賃貸に当たり、安元義隆及び安元孔子の名義を使用したとしても、そのこと自体はさほど不自然とはいえないし、仮に右各物件の賃貸人が安元義隆で、これに係る賃貸収入が原告に帰属しないのであれば、異議申立て及び審査請求の際の原告の態度はきわめて不自然なものといわざるを得ないから、甲第二〇ないし第二二号証をもつて、直ちに、久留米ラーメン及びドライブイン大谷の建物とその敷地の賃貸人が安元義隆であつて、その賃貸料収入が原告に帰属しないものと認めることはできないし、また、ドライブインふじやの建物敷地及びドライブイン大谷の建物が安元義隆及び安元孔子の名義で登記されていたり(甲第一五、第一六号証)、右各物件の賃料の全部又は一部が安元義隆名義の預金口座に振り込まれていたり(甲第二四ないし第二六号証)していても、これをもつて、直ちに右各物件に係る賃料収入が原告に帰属しないと認めることもできない。

他に、原告の自白が真実に反しかつ錯誤に基づくものと認めるに足りる証拠はないから、右の自白の撤回は許されないというべきであり、不動産賃貸収入の金額については全部が当事者間に争いがないことになる。

(二)  雑収入の金額

被告の主張1(一)(2)(雑収入の金額)のうち、被告主張の報奨金を原告が収受した事実については当事者間に争いがない。原告は、右報奨金が原告の所得税の計算上、収入として扱われることを争うと主張するが、原告が収受した報奨金は特段の事情のない限り原告の収入と認めるべきであることは明らかであるところ、原告は、右報奨金が収入とならない理由については何も主張、立証をしないから、右の報奨金のうち少なくとも被告主張の金額は原告の雑収入(不動産所得を生ずべき事業ないし業務の遂行に付随して生じた収入で不動産所得の計算上総収入金額に算入されるもの。以下同じ。)と認められるべきである。

2  必要経費

(一)  租税公課

被告の主張1(二)(1)(租税公課)の金額が必要経費となることについては当事者間に争いがないところ、原告は、右金額に昭和五七年分更正で認められたその余の租税公課に係る額を加算した合計九七万六四七九円が必要経費に算入されるべきであると主張するが、右のその余の租税公課の具体的内容については主張、立証をしないから、必要経費に算入される租税公課は被告主張額以上には存在しないものと認めるべきである。

(二)  損害保険料

被告の主張1(二)(2)(損害保険料)については当事者間に争いがない。

(三)  減価償却費

被告の主張1(二)(3)(減価償却費)のうち、別表五の一のA欄、B欄、F欄については当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第五ないし第七号証、第八号証の一、第九、第一〇、第一二、第一三号証、第一四号証の一、第一七号証、弁論の全趣旨により原本の存在と成立が認められる乙第八号証の二、第一一号証、第一四号証の二、第一五号証及び弁論の全趣旨によれば、各減価償却資産の取得価額はそれぞれ同表のC1欄記載のとおりであることが認められる。

償却方法については、弁論の全趣旨によれば原告は償却方法について届出をしていないことが認められるから、所得税法四九条及び同法施行令一二五条一号の規定に基づき別表五の一のE欄記載のとおり定額法によるべきことになるので、同表のA欄、B欄、F欄及びC1欄の記載の事実に基づいて各減価償却資産の償却額を計算すると、それぞれ同表のJ欄記載のとおりとなる。

なお、原告は、ドライブインふじやについて、昭和四九年に建物増築を行い、その費用として大建総業株式会社に対し六〇〇万円を支払つているので、右増築分に係る減価償却費として二二万五〇〇〇円が必要経費に算入されるべきであると主張する。しかし、右主張に沿う甲第一二号証(大建総業株式会社作成名義の領収書)は、その成立の真正について何らの立証がない上、前掲乙第八号証の一、二によれば、原告は右の増築が行われたと主張する昭和四九年の二年後である昭和五一年分の原告の所得税について行われた税務調査の際には、右のような主張はしておらず、ドライブインふじやの建物に係る減価償却費の計算上、その取得価額を別表五の一のC1欄と同額の九六〇万五〇七二円とする修正申告書を提出していることが認められ、右事実と対比して、右甲第一二号証の内容を信用することもできず、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。

また、原告は、別表五の一掲記の資産以外に原告の居住するイトーピア東大島の一部を不動産所得に係る収入金額を得るための事務所として使用しているので、イトーピア東大島に係る減価償却費のうち、右の事務所部分に係る分として一七万一三六〇円が必要経費に算入されるべきであると主張する。しかし、所得税法四五条一項一号、同法施行令九六条によれば、家事関連費はその主たる部分が不動産所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつその必要である部分を明確に区分できる場合に、その部分に限つて必要経費に算入されることとされているところ、弁論の全趣旨によれば、イトーピア東大島においては事務所部分が区画されているわけではなく、単に原告が住居である同所において自己の不動産所得に係る業務に関する事務を行つているにすぎないことが認められるから、イトーピア東大島の一部を事務所とみて当該部分に関する減価償却費その他の経費を必要経費と認めることはできない。

(四)  借入金利息

被告の主張1(二)(4)(借入金利息)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについては当事者間に争いがない。原告は、他にも算入されるべきものがあると主張するが、他に算入されるべき借入金利息について原告は具体的に主張、立証しないから、被告主張額を超える借入金利息は存在しないものと認めるべきである。

(五)  管理費

被告の主張1(二)(5)(管理費)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについては当事者間に争いがない。原告は、他にイトーピア東大島の管理費のうち、事務所部分に係る分として八万二〇八〇円が算入されるべきであると主張するが、右部分に係る経費が算入されるべきでないことは右(三)に述べたとおりである。

(六)  その他の必要経費の有無

甲第一三号証は、ドライブインふじやに係る風呂及び便所の修理費として、菅野高明が一六〇万円を受領した旨の同人作成名義の昭和五七年五月二一日付領収書であるが、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第一号証によれば、菅野高明は右のような工事は請け負つたことがなく、甲第一三号証の作成にも関与していないことが認められるから、同号証はその成立の真正が認められない上、その内容も到底信用することができない。

また、甲第二七号証は、ドライブインふじやに係る看板塔工事の費用として、河嶋工業株式会社が一一五万円を受領した旨の同会社作成名義の昭和五七年五月二〇日付け領収書であるが、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第二二号証によれば、同社が右の看板塔の工事をしたのは昭和五四年以前のことでしかも無償であり、同社の代表者は甲第二七号証の作成には関与していないことが認められるから、同号証はその成立の真正が認められない上、その内容も到底信用することができない。

3  課税総所得金額

原告の不動産所得の金額は、右1の総収入金額の合計額二二三四万六一七八円から右2の必要経費の合計額四七九万六三七二円を控除した一七五四万九八〇六円となるところ、被告の主張1(四)(所得控除の金額の合計額)は当事者間に争いがないから、その金額二一六万六二〇〇円を控除した一五三八万三〇〇〇円(一〇〇〇円未満の端数切捨て)が原告の昭和五七年分の課税総所得金額となる。

三  原告の昭和五八年分の課税総所得金額について

1  総収入金額

(一)  不動産賃貸収入の金額

被告主張2(一)(1)(不動産賃貸収入の金額)についての原告の自白の撤回は右二1(一)に述べたと同様の理由で許されないというべきであるから、不動産賃貸収入金額については全部が当事者間に争いがないことになる。

(二)  雑収入の金額

被告の主張2(一)(2)(雑収入の金額)のうち、被告主張の報奨金を原告が収受した事実については当事者間に争いがなく、被告主張の金額が原告の雑収入と認められるべきことは右二1(二)に述べたと同様である。

原告が昭和五八年中にモノハウスⅡの建物を取得したことは当事者間に争いがなく、原本の存在と成立に争いがない乙第二号証によれば、原告は賃借人坊邦清との賃貸借契約締結の際の特約により同人が築造するモノハウスⅡの建物を無償で取得したことが認められるところ、弁論の全趣旨により原本の存在と成立が認められる乙第一六号証によれば、モノハウスⅡの建物の昭和五九年度の固定資産税評価額は二六八万七三八〇円であることが認められるから、原告は昭和五八年中に少なくとも右価額に相当する経済的利益を得たものというべきである。

2  必要経費

(一)  租税公課

被告の主張2(二)(1)(租税公課)の金額が必要経費となることについては当事者間に争いがないところ、原告は、右金額に昭和五八年分更正で認められたその余の租税公課に係る額を加算した一三一万〇五一〇円が必要経費に算入されるべきであると主張する。しかし必要経費に算入される租税公課が被告主張額以上には存在しないものと認めるべきであることは、昭和五七年分について右二2(一)に述べたとおりである。

(二)  損害保険料

被告の主張2(二)(2)(損害保険料)については当事者間に争いがない。

(三)  修繕費

被告の主張2(二)(3)(修繕費)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについて当事者間に争いがない。

原告は、他にイトーピア東大島の事務所部分に係る分として一一万六〇〇〇円が算入されるべきであると主張するが、右部分に係る経費が算入されるべきでないことは右二2(三)に述べたとおりである。

(四)  減価償却費

被告の主張2(二)(3)(減価償却費)のうち、別表五の二のA欄、B欄、F欄については当事者間に争いがなく、同表の順号1ないし8記載の各減価償却資産の取得価額については右二2(三)に述べたとおりそれぞれ同表のC1欄記載のとおりであり、前掲乙第一六号証によれば、モノハウスⅡの取得価額も同表のC1欄の順号9記載のとおりであることが認められる。

また、東砂三丁目ハイツが昭和五八年一二月から空室になつたことは当事者間に争いがないところ、右事実に原本の存在と成立に争いがない甲第六号証、乙第三号証、弁論の全趣旨により成立が認められる甲第一、第四、第五号証、乙第二〇号証、弁論の全趣旨により原本の存在と成立が認められる甲第三号証を総合すると、(1)東砂三丁目ハイツは住宅・都市整備公団の分譲住宅であり、購入の申込資格を有するのは自己及び家族の居住する用に供する者に限られていたこと、(2) 登記簿上、原告とその母安元ヤス子との持分各一〇分の五の共有となつていること、(3) 当初の賃借人である見津洋三は、仕事の都合で帰宅できなかつた日の夜間のみ利用してガスなども使わないという約定で賃借していたものであり、もともとは母親のために東砂三丁目ハイツを購入したと原告から聞かされていて原告の母親が上京したときには母親に使わせるという約束があり、賃料は低廉であつたこと。(4) 空室になつた昭和五八年一二月以降昭和六一年五月までは賃貸に供されていないことが認められ、以上の事実によれば、原告が東砂三丁目ハイツを取得した目的には定かでないところがあるものの、空室であつた昭和五八年一二月以降昭和六一年五月までは、不動産所得を生ずべき業務の用に供していたものとは認め難い。

これに対し、原告は、昭和五八年一二月以降も同室について毎日ハウジング新宿店等に賃借人の募集を依頼していたから、右の業務の用に供していたものとして、償却期間に含めるべきであると主張する。しかし、右主張に沿う甲第二号証(昭和五七年一二月以降昭和六一年四月まで原告に対して同室の賃借人の斡旋をし続けてきた旨の記載がある毎日ハウジング新宿店作成名義の証明書)は、その成立の立証がない上、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第二一号証によれば、毎日ハウジング新宿店が開設されたのは昭和六〇年九月であつて、昭和五八年一二月当時の賃借人の斡旋状況について証明する立場にはなかつた事が認められ、右事実と対比すれば、同号証はその内容を信用し難いものであり、他に右原告主張事実を認めるに足りる証拠はない。

そうすると、昭和五八年一二月以降は、東砂三丁目ハイツに係る減価償却費その他の経費を原告の不動産所得に係る必要経費に算入することはできない。

なお、原告は、モノハウスⅡについても償却期間が一二分の一一とされるべき旨主張するが、モノハウスⅡを事業の用に供したのが別表五の二の順号9のB欄記載のとおり昭和五八年四月からであることは当事者間に争いがないのであるから、償却期間が同年四月から一二月までの一二分の九であることは明らかである。

償却方法については右二2(三)に述べたと同様に、別表五の二のE欄記載のとおり定額法によるべきことになるので、同表のA欄、B欄、F欄及びC1欄の記載の事実に基づき、償却期間を東砂三丁目ハイツについては一二分の一一、モノハウスⅡについては一二分の九として、各減価償却資産の償却額を計算すると、それぞれ同表のJ欄記載のとおりとなる。

なお、他にイトーピア東大島の減価償却費のうち事務所部分に係る分及びドライブインふじやの建物増築に係る減価償却費が算入されるべきであるとの原告の主張が採用できないことは、昭和五七年分について右二2(三)に述べたとおりである。

(五)  借入金利息

被告の主張2(二)(5)(借入金利息)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについては当事者間に争いがない。

原告は、他にも算入されるべきものがあると主張するが、被告主張額を超える借入金利息が存在しないものと認めるべきであることは、昭和五七年分について右二2(四)において述べたとおりである。

(六)  管理費

被告の主張2(二)(6)(管理費)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについては当事者間に争いがない。

原告は、他にイトーピア東大島の管理費のうち、事務所部分に係る分として八万四〇八〇円が算入されるべきであると主張するが、算入されるべきでないことは昭和五七年分について右二2(三)に述べたとおりである。

3  課税総所得金額

原告の不動産所得の金額は、右1の総収入金額の合計額二四一七万一五六六円から右2の必要経費の合計額六三九万二八二二円を控除した一七七七万八七四四円となるところ、被告の主張2(四)(所得控除の額の合計額)は当事者間に争いがないから、その金額二五四万六三〇〇円を控除した一五二三万二〇〇〇円(一〇〇〇円未満の端数切捨て)が原告の昭和五八年分の課税総所得金額となる。

四  原告の昭和五九年分の課税総所得金額について

1  総収入金額

(一)  不動産賃貸収入の金額

被告の主張3(一)(1)(不動産賃貸収入の金額)についての自白の撤回は右二1(一)に述べたと同様の理由で許されないというべきであるから、不動産賃貸収入金額については全部が当事者間に争いがないことになる。

(二)  雑収入の金額

被告の主張3(一)(2)(雑収入の金額)のうち、被告主張の報奨金を原告が収受した事実については当事者間に争いがなく、被告主張の金額が原告の雑収入と認められるべきことは右二1(二)に述べたと同様である。

2  必要経費

(一)  租税公課

被告の主張3(二)(1)(租税公課)の金額が必要経費となることについては当事者間に争いがないところ、原告は、右金額に昭和五九年分更正で認められたその余の租税公課に係る額を加算した一二八万五八二五円が必要経費に算入されるべきであると主張する。しかし、必要経費に算入される租税公課が被告主張額以上には存在しないものと認めるべきであることは、昭和五七年分について右二2(一)に述べたとおりである。

(二)  損害保険料

被告の主張3(二)(2)(損害保険料)については当事者間に争いがない。

(三)  修繕費

被告の主張3(二)(3)(修繕費)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについては当事者間に争いがない。

原告は、他にイトーピア東大島の事務所部分に係る分として三万八〇〇〇円が算入されるべきであると主張するが、右部分に係る経費が算入されるべきでないことは右二2(三)に述べたとおりである。

(四)  減価償却費

被告の主張3(二)(4)(減価償却費)のうち、別表五の三のA欄、B欄、F欄については当事者間に争いがなく、同表の順号1ないし8記載の各減価償却資産の取得価額については右二2(三)又は三2(四)に述べたとおりそれぞれ同表のC1欄記載のとおりであり、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第一七号証、弁論の全趣旨により原本の存在と成立が認められる乙第一八、第一九号証によれば、同表の順号9ないし11のシヤトレーイン横浜及び順号12のカーサ蒲田の取得価額もそれぞれ同表のC1欄の順号9ないし12記載のとおりであることが認められる。

償却方法については、右二2(三)に述べたと同様に、別表五の三のE欄記載のとおり定額法によるべきことになるので、同表のA欄、B欄、F欄及びC1欄の記載の事実に基づいて各減価償却資産の償却額を計算すると、それぞれ同表のJ欄記載のとおりとなる。

他にイトーピア東大島の減価償却費のうち事務所部分に係る分及びドライブインふじやの建物増築に係る減価償却費が算入されるべきであるとの原告の主張が採用できないことは、昭和五七年分について右二2(三)に述べたとおりであり、また、東砂三丁目ハイツの減価償却費が算入されるべきではないことは昭和五八年分について右三2(四)に述べたと同様である。

(五)  借入金利息

被告の主張2(二)(5)(借入金利息)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについては当事者間に争いがない。

原告は、他にも算入されるべきものがあると主張するが、被告主張額を超える借入金利息が存在しないものと認めるべきことは、昭和五七年分についての右二2(四)に述べたと同様である。

(六)  管理費

被告の主張2(二)(6)(管理費)については、被告主張の額が必要経費に算入されることについては当事者間に争いがない。

原告は、他にイトーピア東大島の管理費のうち、事務所部分に係る分及び東砂三丁目ハイツの分が算入されるべきであると主張するが、これらが算入されるべきでないことは、昭和五七年分についての右二2(三)及び昭和五八年分についての右三2(四)に述べたとおりである。

3  課税総所得金額

原告の不動産所得の金額は、右1の総収入金額の合計額一九六一万七六九九円から右2の必要経費の合計額五二六万六九六八円を控除した一四三五万〇七三一円となるところ、被告の主張2(四)(所得控除の額の合計額)は当事者間に争いがないから、その金額二七四万二三〇〇円を控除した一一六〇万八〇〇〇円(一〇〇〇円未満の端数切捨て)が原告の昭和五八年分の課税総所得金額となる。

五  本件各更正及び本件各賦課決定の適法性

以上、原告の各係争年分の所得税の課税総所得金額は、右二ないし四の各3に述べたとおりであり、本件各更正はいずれもこれを下回るものであるから適法であり、本件各更正を前提とする本件各賦課決定もいずれも適法である。

六  よつて、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 石原直樹 裁判官 佐藤道明)

別表一 課税処分等の経緯

1 昭和五七年分

〈省略〉

2 昭和五八年分

〈省略〉

3 昭和五九年分

〈省略〉

別表二 昭和57年分ないし同59年分の不動産賃貸料収入明細表

〈省略〉

別表三

1雑収入の額の明細表

金額単位 円

〈省略〉

2 上記1の※印部分の計算明細表

上記1の※印部分の金額は、次表のとおり防府市長の報奨金の支払額に、同市長からの固定資産税課税標準通知額のうちドライブイン恋路に係る同標準額の占める割合を乗じて計算した。

〈省略〉

金額単位 円

別表四

1 租税公課の額の明細表

金額単位 円

〈省略〉

上記表の税目欄の「固」は、固定資産税及び都市計画税を示し、「不」は不動産取得税を示す。また、上記表の※印部分の金額は、次記2の表のとおりドライブイン恋路の敷地及び建物に対する固定資産税の課税標準額(千円未満切り捨て)に税率を乗じて計算した。

2 前記1の表の※印部分の計算明細表

金額単位 円

〈省略〉

上記表≒印部分の金額は、昭和58年分及び同59年分の土地の課税標準額が不明であったため、次記3の表のとおり原告が防府市内に所有する土地に対する同57年分の課税標準額を基に計算した。

3 上記2の表≒印部分の金額の計算明細表

金額単位 円

〈省略〉

別表五の一

昭和57年分減価償却費一覧表

〈省略〉

別表五の一の付表

ストーク新川の計算明細表

〈省略〉

別表五の二 昭和58年分減価償却費一覧表

〈省略〉

別表五の三 昭和59年分減価償却費一覧表

〈省略〉

別表五の三の付表 その1

シャトレーイン

横浜の計算明細表

〈省略〉

上記表の価額欄は、千円未満を四捨五入して算出してある。

別表五の三の付表 その2

カーサ蒲田の計算明細表

〈省略〉

別表六

借入金利息明細表

( )内は、同欄の借入金利息の支払対象年月あるいは同期間を示す

〈省略〉

金額単位 円

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